美術と建築のあいだ U  彦坂尚嘉 南泰裕 二人展
2008年6月7日(土)〜7月3日(木)

美術と建築のあいだ U 彦坂尚嘉 南泰裕 二人展

「美術と建築のあいだ」と題し、脱領域的な表現を模索する美術家彦坂尚嘉と建築家南泰裕の二人の進行形を展示いたします。
彦坂尚嘉は美術にとどまらず戦後の日本そのもののあり方を再考させずにはおれない 「皇居美術館空想」という衝撃的な作品を、南泰裕は美術的解釈を用いた独自の デザインプロセスを実践しているプロジェクトを展示いたします。



【関連企画】 美術と建築のあいだ II トークセッション
http://artstudy.exblog.jp/
詳細はページ下をご覧下さい


彦坂 尚嘉 Naoyoshi Hikosaka


皇居美術館空想 建築模型彫刻


テーマ: 欲望と史律
欲望としての美術と言う領域を考えると、かなり広範なものがある。その広範さを出来るだけ広く拡大すると、その欲望の歴史と堆積・沈殿に驚かされるのである。 その欲望史の戒律の中に、宇宙の創世も、ファッションも、建築も、自動車も、航空母艦も、立ち現れてくる。おそらく欲望の歴史としての美術は、宇宙そのものの欲望の歴史として あって、その欲望の果ての、反転したものとしての、高度の建築と、そして高度な芸術としての美術作品が存在する。 つまり基盤にあるのは、欲望とその歴史であり、歴史の内側から反転が 起きるのである。すぐれた建築を見た時に起きる感動は、この反転の歴史構造が、ストレートに見えるからである。そこには実用史としての建築と、芸術 史としての建築が、反転関係で接している。たぶん美術作品は、こうした反転を自覚する事を、今日では失敗してし まったジャンルなのだろうと思う。欲望史と、欲望の反転史の接する構造を自覚化する契機を、もはや失っ ているのである。 私が建築家に接して学ぼうとするのは、本来の芸術が持つ、この基本としての欲望と、それに反転する構造の接 合の歴史の微妙な関わり方である。そこには、構造史と芸術史、そして社会史と個人史、さらに経済史と自 由の歴史の問題が、複雑に生き生きとせめぎ合っているからである。

 彦坂尚嘉は、パリ青年ビエンナーレ(1975 年)、ヴェネチアビエンナーレ(1982 年)、サンパウロビエンナーレ(1987 年)、ユーロパリア・ジャパン(1989 年)、グローバル・コンセプチャアリズム展(クイーンズ美術館、ニューヨーク1999 年)、センチュリシティ展(テイトモダーン、ロンドン、2001 年)、リスボン国際建築トリエンナーレ(ポルトガル、2007 年)など世界各地の国際展に参加し、その多くは国際交流基金から日本代表作家として派遣され出品したものでした。
受賞歴・1998 年には「写真の会賞」、2005 年には兵庫国際絵画コンペティションで優秀賞受賞しています。


【経歴】
 彦坂尚嘉は1946(昭和21)年東京都世田谷区に生まれ育ちます。日展常務理事日本芸術院会員画家である清原啓一氏に師事して油彩画を小学校一年生から高校修了まで学びます。1967年多摩美術大学絵画科油彩入学して前衛美術家の草分けである斉藤義重に影響を受けます。さらにニューヨーク在住の前衛音楽家刀根康尚に師事してジョン・ケージの前衛音楽理論を学び、1982 〜 83 年には文化庁在外研修員としてペンシルバニア大学大学院グラデュエート・スクール・オブ・ファインアーツ留学し、前衛画家中里の指導でアメリカ美術史を学びました。
 現在は鎌倉に住み、藤沢市六会の2棟のアトリエを拠点に制作活動を行っています。
 彦坂尚嘉は、日本の現代美術史の中では、戦後前衛美術家の最後の位置を占めています。本年3 月6 日〜 6 月3 日までロスアンジェルスのゲッティ・インスティテュートで開催されている“Art, Anti-Art, Non-Art: Experimentations in the Public Sphere in Postwar Japan, 1950-1970,"( 芸術・反芸術・非芸術/ 戦後日本の前衛美術、1950〜 1970 年) という回顧展では、彦坂尚嘉が前衛作家の最後に取りあげられています。そしてまた国内の美術史の中では「もの派」を痛烈に批判したアーティストとして知られ、《もの派の外部》を形成した「ポストもの派」の最先頭作家でありました。そういう意味では戦後モダニズムアートと、1975 年以降のポスト・モダンアートの両方にまたがった作家と言えます。

【作品・作風】
 彦坂尚嘉は1970 年、自宅の床にラテックスというゴム液を流したフロアイベント(FLOOR EVENT)で出発しますが、1976 年からは木の支持対にアクリル絵具で色彩を付与したウッドペインティング(WOOD PAINTING)シリーズを開始します。それは木の支持対という意味では〈現実〉性を強く持つ作品ですが、五七五七七という和歌の形式を視覚化したシリーズに結実します。
 さらに先行するもの派を強く批判する立場から、木の上に色彩と形象を復権して、琳派につながる意匠性をもった具象とも抽象ともつかない未分離で両義性を持つ形象絵画を作り出します。この色彩と形象の復権は、それ以後のいわゆるニューウエーブの絵画よりも早くて、ポスト・モダンアートの最も早い先駆けとなるもので、多くの影響を与えました。が、同時にその芸術は〈象徴性〉〈想像性〉〈現実性〉の三性を同時にもつ作品制作へと向かって展開して、多くの凡庸作家とは異質の孤立性と理論的探究性を示します。
 作品は〈二流〉〈一流〉そして〈超一流〉作品へと次第に〈格〉を上げる展開を示していきます。戦後の日本の現代美術家の多くが若いときには先鋭な美術を作っても、歳をとると衰えて凡庸になり制作力を失っていったのに対して、果敢に自己の成長と芸術を理論的にも追求する彦坂尚嘉の姿勢は、瞠目に値するものであります。

【コレクション】
 ソフトマシーン美術館、豊田市美術館、そして千葉市美術館が三大コレクションを形成しています。




南 泰裕
 Yasuhiro Minami


ドローイング
テーマ:The Cube is cut out.

 「キューブ」とは、プラトン立体の代表としての幾何学の表象であり、同時にイデア的なものの代理表記でもある。古来、建築は、ひとえにこの「キューブ」の切り取り作業として遂行さ れてきた。この「キューブ」の切り取り作業は、建築において、重層的な意味を帯 びている。 ひとつには、物理的なヴォリュームとしての「キューブ」は切断される ことにより、より高次で複雑な立体が掘り出され、彫像されるという意 味で。 ふたつめには、法的・機能的・経済的規制といった諸々の社会的与件に より、「キューブ」の純粋性が絶えず損なわれてゆく、という意味で。建築における「キューブ」の切り取り作業は、おそらくこれ以外にも、様々な次元において見いだされるのだろうと予見される。

そうして、「キューブ」の切り取り作業によって、建築における幾何学 は絶えず損壊されながら、次第に高次化していく。この切り取り作業の内実を、具体的な住居の設計過程を通して確かめ、形而下と形而上の臨界線に思考の切っ先をできる限り深く挿入してみる こと。それが、この展覧会における試行の要諦である。(南泰裕)

参照: 拙稿「幾何学、または建築を誘惑するもの」(『現代思想』
2006 年7 月号、「幾何学の思考」特集所収)



( みなみ・やすひろ)/ 建築家

1967 年 兵庫県生まれ
1991 年 京都大学工学部建築学科 卒業
1993 年 東京大学大学院修士課程 修了
1997 年 同大学大学院博士課程 修了
同年 アトリエ・アンプレックス設立
2000 年〜 慶応義塾大学、東京外国語大学非常勤講師
2004 年〜 明治大学大学院 非常勤講師
2005 年〜 東京大学、東京理科大学非常勤講師
2007 年 国士舘大学准教授
現在に至る



・作品
《PARK HOUSE》《南洋堂ルーフラウンジ》《spin off》など

・著書
『住居はいかに可能か』(東京大学出版会、2002 年)
『エディフィカーレ・リターンズ』(共著、トランスアート社、2003 年)
『ブリコラージュの伝言』(アートン、2005 年)
『現代住居コンセプション』(共編著、INAX 出版、2005 年)
『トラヴァース』(鹿島出版会、2006 年) など



美術と建築のあいだ II トークセッション


日時6月14日(土)15:00〜18:00
会場 INAX:GINZA(INAX 銀座ショールーム)8Fセミナールーム
INAX 東京都中央区京橋3-6-18 TEL:03-5250-6579


<交通機関>
□銀座線京橋駅2 番出口より徒歩2 分 □有楽町線銀座1 丁目駅9 番出口より徒歩3 分
□浅草線宝町駅A4 出口より徒歩3 分 □ JR 線東京駅八重洲南口より徒歩11 分

<トークセッション>
◆第一部: 彦坂尚嘉
〜The square is cut out./モンドリアンからジャッド、そして
◆第二部: 南泰裕
〜 The cube is cut out.
◆第三部: クロストーク
パネリスト〜
彦坂尚嘉( 美術作家 日本建築学会会員 日本ラカン協会幹事)
南泰裕( 建築家 アトリエ・アンプレックス主宰、国士館大学准教授)
五十嵐太郎( 建築評論家 東北大学准教授)
暮沢剛巳( 美術評論家)


定員50 名( 予約不要)
参加費500 円

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終了後、別会場にて懇親会予定
問い合わせ 070-5020-8361 ( シラハマ)
shirahamamasaya@yahoo.co.jp



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